首巻 是は信長御入洛無き以前の双紙なり(これは信長公がご入洛なさる前の記録である)
   
武衛様と吉良殿と御参会の事

一、四月上旬、三河国吉良義昭殿と斯波義銀様無事参会することになり、今川義元が吉良殿を取り持ち、その席を用意したので、斯波様のお供として信長公がご出陣なさった。三河国上野原でお互いに並ばせ陣形を取ったが、その間は一町ほどであった。いうまでもなく、一方には斯波様が、一方には吉良殿が床几に腰掛け、どちらも一歩も動かず、金10足ほどを双方から真ん中へはこびだされはしたが、他の品物のやり取りはなく、そのまま陣の中へ引き返してしまった。その後双方とも兵を引いた。
一、信長は斯波様を尾張の国主とされ、清洲城を斯波様にお渡しし、自身は北櫓へお移りになった。
三河国上野原=愛知県豊田市あたり

ここで行われたのはいわゆるトップ会談というわけですが、現代にもちょこっと通じるものがありますね。
尾張国、とまとまらぬ国のトップを名乗る吉良と斯波。その二人を取り持ったのが三河の今川義元。
義元はこの介入により尾張国での影響力を強めようとしたのでしょう。個人的にアメリカっぽいなと思いました。
しかしこの二人どちらも譲らず、何の進展もなかったと思われます。
義元は吉良を取り持ちましたが、信長は斯波を取り持ちます。
これはもちろん表向きは吉良ではなく斯波が尾張国主、というアピールですが、義元に対するけん制でもあったはずです。
この会合がよい方向に向かわなかったため、次の事件が起きてしまいます。


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